戸籍の広域交付制度とは?相続手続きでの利用方法・取得できる人・注意点をわかりやすく解説

戸籍の広域交付制度とは?
相続手続きでの利用方法・取得できる人・注意点をわかりやすく解説
親や配偶者が亡くなり、相続手続きを始める際に必要になるのが「戸籍謄本」です。
相続では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等を集めなければならないケースが多くあります。
しかし、亡くなった方が何度も引っ越しや転籍をしていた場合、
「昔の本籍地が遠方にある」
「複数の市区町村から戸籍を取り寄せなければならない」
「どこの役所に請求すればよいか分からない」
といった問題が生じることがあります。
そこで知っておきたいのが、2024年3月1日から始まった「戸籍の広域交付制度」です。
この制度によって、本籍地以外の市区町村の窓口でも、一定の戸籍謄本等を取得できるようになりました。
例えば、東京に住んでいる方が、北海道や大阪に本籍のある親の戸籍謄本を、最寄りの市区町村の窓口で請求できる場合があります。
この記事では、戸籍の広域交付制度の仕組み、取得できる人、
必要書類、相続手続きでの活用方法、利用する際の注意点について、分かりやすく解説します。
〈目 次〉
1.戸籍の広域交付制度とは?
2.相続手続きではなぜ戸籍が必要?
3.広域交付制度を利用できる人は?
4.兄弟姉妹の相続では広域交付制度が使えない?
5.広域交付制度で取得できる戸籍の種類
6.戸籍の広域交付制度のメリット
7.広域交付制度を利用する際の必要書類
8.広域交付制度は郵送や代理人による請求ができる?
9.戸籍はその日のうちに取得できる?
10.相続手続きで広域交付制度を利用する流れ
11.広域交付制度を利用すれば相続手続きはすべて終わる?
12.行政書士に戸籍収集を依頼するメリット
13.まとめ|戸籍の広域交付制度を活用して相続手続きの負担を減らそう
1.戸籍の広域交付制度とは?
戸籍の広域交付制度とは、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍謄本等を取得できる制度です。
これまで、戸籍謄本を取得する場合には、原則として本籍地の市区町村へ請求する必要がありました。
例えば、現在は東京都に住んでいるものの、本籍地が福岡県にある場合、従来は福岡県の市区町村へ郵送などで請求する必要がありました。
しかし、広域交付制度を利用すれば、一定の条件のもと、東京都内の市区町村の窓口でも福岡県に本籍のある戸籍謄本を取得できます。
また、複数の市区町村に本籍があった場合でも、対象となる戸籍を一つの窓口でまとめて請求できるようになりました。
特に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を収集する相続手続きでは、便利な制度といえます。
2.相続手続きではなぜ戸籍が必要?
相続手続きでは、誰が法律上の相続人になるのかを確定する必要があります。

例えば、父親が亡くなり、母親、長男、長女の3人が相続人だと思っていたとします。
しかし、父親の戸籍を調査すると、
「過去に別の人と結婚していた」
「前婚の子どもがいた」
「養子縁組をしていた」
といった事実が判明することもあります。
このような場合、家族が把握していなかった人も相続人になる可能性があります。
そのため、相続手続きでは、原則として亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍を確認し、相続人に漏れがないか調査します。
戸籍の広域交付制度は、こうした相続人調査の負担を軽減するためにも役立ちます。
3.広域交付制度を利用できる人は?
広域交付制度は、誰でも利用できるわけではありません。
原則として、次の人が請求できます。
本人
配偶者
父母・祖父母などの直系尊属
子ども・孫などの直系卑属

例えば、子どもが亡くなった父親の戸籍を請求する場合には、広域交付制度を利用できます。
また、父母が子どもの戸籍を請求する場合や、祖父母と孫の関係でも利用できる場合があります。
一方、兄弟姉妹は、兄弟姉妹という関係だけでは広域交付制度を利用できません。
これは相続手続きで特に注意したいポイントです。
4.兄弟姉妹の相続では広域交付制度が使えない?
例えば、兄が亡くなり、弟が相続人になったケースを考えてみましょう。
弟が兄の戸籍を取得したい場合、兄弟姉妹という関係だけでは広域交付制度の請求対象になりません。
そのため、兄の戸籍については、原則として本籍地の市区町村へ請求する必要があります。
ただし、弟が自分の父母や祖父母などの戸籍を請求する場合には、直系尊属として広域交付制度を利用できることがあります。
つまり、兄弟姉妹が相続人になるケースでも、すべての戸籍が広域交付制度の対象外になるわけではありません。
「誰の戸籍を、誰が請求するのか」によって利用できるかどうかが異なります。
兄弟姉妹が相続人となる相続では、亡くなった方の父母や祖父母の戸籍まで調査する必要が生じることもあり、戸籍収集が複雑になる場合があります。
5.広域交付制度で取得できる戸籍の種類
広域交付制度では、主に次の戸籍証明書を取得できます。
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本):現在の戸籍の全員分を記載した証明書 450円
除籍全部事項証明書・除籍謄本 :戸籍に記載されていた人が全員除かれた戸籍など 750円
改製原戸籍謄本 :法改正などで戸籍が作り替えられる前の戸籍 750円
相続手続きでは、現在の戸籍だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍謄本が必要になることが多くあります。
広域交付制度では、これらも対象となります。
ただし、すべての古い戸籍が必ず取得できるわけではありません。
コンピュータ化されていない一部の戸籍などは広域交付の対象外です。
また、戸籍抄本(個人事項証明書)や戸籍の附票は、広域交付制度では取得できません。
6.戸籍の広域交付制度のメリット

メリット①本籍地が遠方でも、近くの市区町村の窓口で戸籍を取得できる
例えば、亡くなった父親の本籍地が、
北海道
宮城県
東京都
大阪府
と何度も変わっていた場合、従来はそれぞれの市区町村へ請求する必要がありました。
広域交付制度を利用すれば、対象となる戸籍を一つの窓口でまとめて請求できます。
メリット② 出生から死亡までの戸籍を集めやすい
相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を収集することが重要です。
広域交付制度では、対象となる戸籍について、複数の本籍地にまたがる戸籍をまとめて請求できるため、相続人調査を進めやすくなります。
ただし、古い戸籍の一部が対象外となる場合などには、別途本籍地へ請求する必要があります。
メリット③ 郵送請求の負担を軽減できる
遠方の市区町村へ郵送請求する場合、申請書、本人確認書類、手数料、返信用封筒などを準備する必要があります。
広域交付制度を利用すれば、窓口で対象となる戸籍を請求できるため、こうした郵送手続きの負担を軽減できます。
7.広域交付制度を利用する際の必要書類
広域交付制度を利用する際には、原則として窓口で本人確認が行われます。
本人確認には、次のような顔写真付きの公的な本人確認書類が必要です。
マイナンバーカード
運転免許証
パスポート
その他、官公署が発行した顔写真付きの本人確認書類
健康保険の資格確認書など、顔写真のない書類だけでは広域交付の本人確認要件を満たしません。
また、請求する戸籍の対象者について、氏名、生年月日、本籍、筆頭者などの情報が必要になりますので、
窓口へ行く前に、請求先の市区町村の案内を確認しておくと安心です。
8.広域交付制度は郵送や代理人による請求ができる?
広域交付制度には重要な制限があります。
それは、請求できる本人が市区町村の窓口へ出向く必要があるという点です。
広域交付制度では、原則として次の方法は利用できません。
郵送による請求
委任状を利用した代理人による請求
行政書士などの専門家による代理請求
例えば、子どもが仕事で忙しいため、配偶者に委任状を渡して亡くなった父親の戸籍を広域交付で取得してもらう、ということはできません。
また、行政書士が依頼者の代理人として広域交付制度を利用することもできません。
ただし、行政書士が戸籍収集をサポートできないという意味ではありません。
行政書士は、受任した業務に必要な範囲で、法令に従って本籍地の市区町村へ戸籍を請求できる場合があります。
広域交付制度による請求と、専門家による通常の戸籍請求は別の仕組みです。
9.戸籍はその日のうちに取得できる?
広域交付制度を利用すれば、必ずその日のうちに戸籍を取得できるというわけではありません。
特に、出生から死亡までの戸籍をまとめて請求する場合には、複数の戸籍を確認する必要があるため、時間がかかることがあります。
市区町村によっては、後日の交付となる場合もあります。
また、システムの状況や戸籍の内容によっては、広域交付制度で取得できない場合もあります。
相続手続きの期限が迫っている場合には、余裕を持って戸籍収集を始めましょう。
10.相続手続きで広域交付制度を利用する流れ
相続手続きで戸籍の広域交付制度を利用する場合には、次のような流れになります。

STEP1 亡くなった方の情報を確認する
氏名、生年月日、死亡年月日、本籍地など、分かる範囲で情報を整理します。
STEP2 請求できる人を確認する
配偶者、子ども、父母など、広域交付制度を利用できる人か確認します。
STEP3 市区町村の窓口へ行く
顔写真付きの本人確認書類を持参して、窓口で請求します。
STEP4 出生から死亡までの戸籍を請求する
相続手続きで使用することを伝え、必要な戸籍を請求します。
STEP5 取得できなかった戸籍を確認する
広域交付制度の対象外となった戸籍がある場合には、本籍地の市区町村へ別途請求します。
STEP6 相続人を確定する
収集した戸籍を確認し、相続人に漏れがないか調査します。
11.広域交付制度を利用すれば相続手続きはすべて終わる?
広域交付制度は、戸籍収集を便利にする制度です。
しかし、戸籍を取得しただけで相続手続きがすべて終わるわけではありません。
相続手続きでは、戸籍収集のほかにも、
相続人の確定
遺言書の確認
相続財産の調査
遺産分割協議
預貯金の解約・名義変更
不動産の相続登記
など、必要な手続きが沢山あります。
また、取得した戸籍を読み解き、相続人を正確に確定することも重要です。
例えば、戸籍から前婚の子どもや養子縁組が判明するケースもあります。
広域交付制度は便利ですが、相続人調査そのものが不要になるわけではありません。
12.行政書士に戸籍収集を依頼するメリット
広域交付制度によって、戸籍収集は以前より便利になりました。
しかし、次のような場合には、行政書士などの専門家へ相談することも考えられます。
①兄弟姉妹が相続人になる場合
兄弟姉妹の相続では、父母や祖父母の戸籍など、多くの戸籍が必要になることがあります。
②古い戸籍が読めない場合
手書きの戸籍や改製原戸籍などは、内容を読み解くことが難しい場合があります。
③相続人が多い場合
代襲相続や数次相続が発生している場合には、相続人の範囲が複雑になることがあります。
④仕事が忙しく役所へ行けない場合
広域交付制度は本人による窓口請求が原則ですが、行政書士は業務範囲内で、通常の戸籍請求の方法によって収集をサポートできる場合があります。
行政書士は、戸籍収集のほか、相続人調査、相続関係説明図の作成、法定相続情報一覧図の作成・申出代理、争いのない遺産分割協議書の作成などもサポートできます。
なお、不動産の相続登記の申請代理は司法書士等、相続人間の紛争対応は弁護士の専門業務となりますが
KSCグループでは、各種専門家へのおつなぎも含め窓口はすべて行政書士が担当しますのでご安心ください!
13.まとめ|戸籍の広域交付制度を活用して相続手続きの負担を減らそう
戸籍の広域交付制度は、2024年3月1日から始まった、本籍地以外の市区町村でも一定の戸籍謄本等を取得できる制度です。
この制度によって、遠方の本籍地へ個別に戸籍を請求する負担が軽減されました。
特に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を収集する相続手続きでは、大きなメリットがあります。
一方で、利用する際には注意点もあります。
請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属などに限られる
兄弟姉妹という関係だけでは利用できない
郵送請求や代理人による請求はできない
顔写真付きの本人確認書類が必要
戸籍の附票や戸籍抄本などは対象外
一部の古い戸籍は取得できない場合がある
また、戸籍を取得した後には、相続人を正確に確定し、預貯金や不動産などの相続手続きを進める必要があります。
「亡くなった親の戸籍をどこで取得すればよいか分からない」
「兄弟姉妹が相続人なので、戸籍収集が複雑になっている」
「出生から死亡までの戸籍を集めたけれど、相続人が誰なのか分からない」
という場合には、行政書士などの専門家への相談も検討してみましょう。
戸籍の広域交付制度を上手に活用し、相続人調査を正確に進めることが、スムーズな相続手続きの第一歩です。
