遺言書の種類とは?自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いを行政書士が解説

遺言書の種類とは?自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いを行政書士が解説
「遺言書を作ったほうがいいと言われたけれど、どんな種類があるの?」
「自筆で書けば遺言書になるの?」
「公正証書遺言にしたほうがいいの?」
「できるだけ費用をかけずに遺言書を作りたい」
遺言書について調べていると、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれ作成方法や保管方法、メリット・デメリットなどが異なります。
この記事では、遺言書について初めて調べる方に向けて、
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いについて、行政書士が分かりやすく解説します。
〈目 次〉
1.遺言書とは?
2.遺言書にはどんな種類がある?
3.自筆証書遺言とは?
4.自筆証書遺言のメリット
5.自筆証書遺言のデメリット
6.自筆証書遺言書保管制度とは?
7.公正証書遺言とは?
8.公正証書遺言のメリット
9. 公正証書遺言のデメリット
10. 3種類の遺言書を比較すると?
11. どの遺言書を選べばいい?
12. まとめ:こんな方は遺言書を検討しましょう
1.遺言書とは?
遺言書とは、亡くなった後の財産の分け方などについて、本人の意思を残しておくための書面です。
例えば、
「妻に自宅を相続させたい」
「長男に事業を引き継いでもらいたい」
「お世話になった人に財産を渡したい」
「子どもたちが相続で争わないようにしたい」
といった希望を、一定の方式に従って残すことができます。
遺言書を作成しておくことで、相続が発生した後の手続きや、遺産分割に関する家族間のトラブルを防ぐことにつながります。
ただし、遺言書は「何を書いても自由」というわけではありません。
法律上の方式を満たしていなければ、遺言としての効力が認められない可能性があります。
そのため、遺言書を作成するときは、内容だけでなく「どの方式で作成するのか」も非常に重要です。
2.遺言書にはどんな種類がある?
一般的な普通方式の遺言には、主に次の3種類があります。

① 自筆証書遺言
本人が自分で作成する遺言です。
② 公正証書遺言
公証人が関与して作成する遺言です。
③ 秘密証書遺言
遺言の内容を秘密にしたまま、その存在を公証人に証明してもらう方式です。
この3種類の中でも、実際に利用されることが多いのが
①自筆証書遺言 と ②公正証書遺言 です。
秘密証書遺言は制度として存在しますが、利用する人は比較的少ない方式です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3.自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は、その名前のとおり、基本的に遺言者本人が自筆で作成する遺言です。
公証役場に行かなくても作成できるため、比較的手軽に作れることが大きな特徴です。
例えば、
「私の所有する○○市○○町の土地及び建物を長男○○に相続させる」
「預貯金については妻○○に相続させる」
といった内容を、法律で定められた方式に従って記載します。
ただし、遺言書の全文を自筆することが原則であるなど、一定の要件があります。
なお、財産目録については、一定の要件のもとで、
パソコン等で作成したものや、通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを添付する方法も認められています。
4.自筆証書遺言のメリット
自筆証書遺言には、いくつかのメリットがあります。
メリット① 比較的手軽に作成できる
自分で作成できるため、公証役場で公正証書を作成する場合と比べ、手続きの負担を抑えやすい方法です。
「まずは遺言書を作ってみたい」という方にとって、取り組みやすい方法といえます。
メリット② 費用を抑えやすい
自分で作成する場合、基本的には公正証書遺言のような公証人の手数料は必要ありません。
ただし、専門家に文案作成などを依頼する場合には、その報酬等が発生することがあります。
メリット③ 内容を他人に知られずに作成できる
自分だけで作成する場合、遺言の内容を他人に知られずに準備することができます。
5.自筆証書遺言のデメリット
一方、自筆証書遺言には注意点もあります。
デメリット① 方式を間違える可能性がある
遺言書は、単に紙に希望を書けばよいというものではありません。
法律上の要件を満たしている必要があります。
例えば、日付や署名、押印などについて不備があると、遺言が無効となる可能性があります。
せっかく作った遺言書が無効になってしまえば、本人の希望を実現できなくなる可能性があります。
デメリット② 内容が不明確だとトラブルになる
遺言書が有効であっても、書き方が曖昧だと、相続人の間で解釈をめぐる争いが発生する可能性があります。
例えば、
「自宅は長男に渡す」
と書いてあったとしても、どの不動産を指しているのか明確でない場合、
法務局へ相続登記を申請しても受理されない等、相続手続きで問題になることがあります。
デメリット③ 保管場所が分からなくなる可能性がある
自宅で保管していた場合、遺言者が亡くなった後に、家族が遺言書を見つけられない可能性があります。
遺言書を作ったこと自体を家族に伝えていなければ、存在が知られないままになってしまうこともあります。
6.自筆証書遺言書保管制度とは?
自筆証書遺言については、法務局による「自筆証書遺言書保管制度」があります。
これは、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度です。

自宅の引き出しなどに保管する場合と比べ、紛失や改ざんなどのリスクを抑えることができます。
また、法務局に保管された自筆証書遺言については、
家庭裁判所での検認が不要となるというメリットがあります。
「自筆で遺言書を作りたいけれど、自宅で保管するのは心配」
という方は、この制度を検討する価値があります。
ただし、法務局は遺言の内容そのものについて相談に乗ってくれるわけではありません。
「この内容で家族に希望どおり財産を渡せるのか」
「この書き方で問題ないのか」
といった内容面について不安がある場合には、専門家への相談を検討しましょう。
制度について詳しい説明は法務省のホームページでも確認することができます。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
7.公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言です。
遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人がその内容を公正証書として作成します。
公正証書遺言を作成する際には、原則として証人2人の立会いが必要です。
自筆証書遺言と比較すると手続きは増えますが、法律上の方式に沿って公証人が作成するため、形式面での安心感があります。
8.公正証書遺言のメリット
メリット① 方式上の不備を防ぎやすい
公証人が関与して作成するため、自分だけで作成する場合と比較して、形式的な不備が生じるリスクを抑えやすくなります。
「せっかく作った遺言書が方式不備で無効になるのが心配」
という方には、大きなメリットです。
メリット② 原本が公証役場に保管される
公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されます。
そのため、
「遺言書をどこに置いたか分からない」
「相続人が遺言書を紛失してしまった」
といったリスクを抑えることができます。
メリット③ 原則として検認が不要
公正証書遺言は、家庭裁判所による検認を必要としません。
そのため、相続開始後の手続きを進める際にも、検認手続きを行う必要がありません。
メリット④ 本人が文字を書くことが難しい場合にも利用しやすい
自筆証書遺言と異なり、遺言者本人が全文を自筆する必要はありません。
そのため、病気や高齢などの事情により自筆での遺言書作成が難しい方でも、公正証書遺言を利用できる可能性があります。
9. 公正証書遺言のデメリット
もちろん、公正証書遺言にもデメリットがあります。
デメリット① 費用がかかる
公正証書を作成するため、公証人手数料などの費用が必要になります。
手数料は、遺言の目的となる財産の価額などによって異なります。
そのため、財産の内容や金額によって費用を確認する必要があります。
デメリット② 準備に時間がかかる
公正証書遺言を作成するためには、財産資料や戸籍などを準備し、公証人との打ち合わせを行う必要があります。
自筆で紙に書くだけの方法と比べると、事前準備が必要です。
デメリット③ 自分以外の人と内容の確認が必要
公正証書遺言では、公証人との打ち合わせが必要となり、
作成時には、証人2人が必要です。
「他の人には遺言の内容を知られたくない」
という場合には、作成が難しくなります。
なお、法律上証人になることができない人もいるため、誰でも証人になれるわけではありません。
10. 3種類の遺言書を比較すると?
ここまで説明した3種類の遺言書を比較すると、次のようになります。

特に検討されることが多いのは、
「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」です。
11. どの遺言書を選べばいい?
では、どの遺言書を選べばよいのでしょうか。
一概に「この方法が正解」というわけではありません。
家族関係や財産の内容、遺言者の年齢や健康状態などによって適した方法は異なります。
【自筆証書遺言が向いている人】
例えば、
・できるだけ費用を抑えたい
・ 自分で遺言書を作成したい
・内容を他人に知られたくない
・比較的シンプルな財産構成である
【公正証書遺言が向いている人】
・遺言書の内容を確実に実現したい
・ 家族関係が複雑
・ 財産が多い
・不動産を複数所有している
・相続人同士の関係があまり良くない
・遺言書の紛失や改ざんが心配
・自筆で文章を書くことが難しい
あなたは、どちらにあてはまりそうですか?
12. まとめ:こんな方は遺言書を検討しましょう
遺言書は、「財産がたくさんある人だけが作るもの」ではありません。
例えば、次のような方は、遺言書を検討することをおすすめします。

・子どもがいない
子どもがいない場合、配偶者だけでなく、父母や兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。
遺言書がなければ、思わぬ親族と遺産分割協議をすることになるケースもあります。
・再婚している
前の配偶者との間に子どもがいる場合、その子どもも相続人となります。
現在の家族だけで相続するとは限りません。
・子ども同士の関係が複雑
家族間の関係が複雑な場合、遺産分割協議が難航する可能性があります。
あらかじめ遺言書で財産の分け方について意思を示しておくことが、トラブル防止につながる場合があります。
・特定の子どもに多く財産を渡したい
「長年、自分の面倒を見てくれた長女に多く渡したい」
など、法定相続分とは異なる財産配分を希望する場合には、遺言書の作成を検討しましょう。
・内縁の配偶者がいる
内縁の妻・夫は、原則として法定相続人ではありません。
内縁のパートナーに財産を残したい場合には、遺言による遺贈などを検討する必要があります。
また、遺言書を作成するときに重要なのは、「形式を整えること」だけではありません。
最も重要なのは、
「亡くなった後、本当に自分の希望どおりに財産を分けられる内容になっているか」
ということです。

行政書士は、法律で認められた範囲で、
・相続人の調査
・ 財産の整理
・遺言書の文案作成
・遺言内容の検討サポート
・公正証書遺言作成に向けた準備
・必要書類の収集
・遺言執行に関するサポート
などを行うことができます。
特に、
「遺言書を作りたいけれど、何を書けばいいのか分からない」
「自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがいいのか分からない」
という方は、一度専門家に相談してみるとよいでしょう。