養子縁組すると実親の相続権はどうなる?普通養子と特別養子の相続権の違いを解説

養子縁組すると実親の相続権はどうなる?普通養子と特別養子の相続権の違いを解説
養子縁組をすると、実の親の財産は相続できなくなるのでしょうか。
例えば、次のような疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
「子どもの頃に養子に出されたけれど、実の父親が亡くなったら相続できる?」
「再婚した母親の夫と養子縁組をした場合、実の父親の相続権はなくなる?」
「養子と実子では相続できる割合が違う?」
「養子縁組をした人が亡くなった場合、実親と養親のどちらが相続人になる?」
養子縁組は、法律上の親子関係を生じさせる制度です。
そのため、相続人の範囲や相続割合にも大きく関係します。
この記事では、普通養子縁組と特別養子縁組の違い、実親・養親の相続権、
具体的な相続事例、相続手続きでの注意点について分かりやすく解説します。
〈目 次〉
1.養子縁組とは?
2.普通養子縁組と特別養子縁組の違い
3.普通養子縁組では実親の相続権はなくならない
4.特別養子縁組では実親の相続権は原則なくなる
5.具体例① 再婚した母親の夫と養子縁組した場合
6.具体例② 養子と実子がいる場合の相続割合
7.養子縁組した人が亡くなった場合、実親と養親のどちらが相続する?
8.養子縁組をした人にも遺留分はある?
9.養子縁組をすると相続人の人数が増えることがある
10.養子縁組をしていたことを知らなかった場合は?
11.養子縁組を解消した場合、相続権はどうなる?
12.養子縁組がある相続で注意したいこと
13.まとめ|普通養子と特別養子では実親の相続権が異なる
1.養子縁組とは?
養子縁組とは、血縁関係の有無にかかわらず、法律上の親子関係を成立させる制度です。
養子縁組が成立すると、養子は養親の嫡出子としての身分を取得します。
そのため、養親が亡くなった場合には、原則として実子と同じように相続人になります。
例えば、父親に実子である長男と、養子である次男がいたとします。
父親が亡くなった場合、長男と次男はどちらも子どもとして相続人になります。
ただし、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、実親との相続関係に重要な違いがあります。
2.普通養子縁組と特別養子縁組の違い
普通養子縁組と特別養子縁組の主な違いは、次のとおりです。

最も重要なのは、実親との法律上の親子関係が継続するかどうかという点です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3.普通養子縁組では実親の相続権はなくならない
普通養子縁組の大きな特徴は、養親との間に新たな法律上の親子関係が生じても、実親との親族関係はなくならないことです。
つまり、普通養子縁組をした人は、
①実親の相続人になる
②養親の相続人にもなる
という、両方の相続権を持つことになります。
例えば、Aさんが子どもの頃にBさん夫婦と普通養子縁組をしたとします。
その後、実父が亡くなった場合、Aさんは実父の相続人になります。
さらに、養父Bさんが亡くなった場合にも、Aさんは養父の相続人になります。
「養子に出されたから実の親とは関係がなくなった」
「長年会っていないので実親の相続権はない」
というわけではありません。
普通養子縁組では、実親との交流がなくても、法律上の親子関係が継続している限り、相続権が認められます。
4.特別養子縁組では実親の相続権は原則なくなる
一方、特別養子縁組は、子どもの福祉のために設けられた制度です。
家庭裁判所の審判によって成立し、原則として実親や実方の血族との法律上の親族関係が終了します。
そのため、特別養子縁組が成立した子どもは、原則として実親が亡くなっても法定相続人にはなりません。
例えば、Aさんが特別養子縁組によってBさん夫婦の子どもになったとします。
その後、実父が亡くなっても、Aさんには原則として実父の相続権がありません。
一方、養父Bさんが亡くなった場合には、Aさんは養父の子どもとして相続人になります。
ただし、特別養子縁組には、夫婦の一方が他方の実子を養子とする場合(第817条の3第2項ただし書)など、
実方との親族関係が終了しない例外があります。
したがって、個別の相続では戸籍等を確認する必要があります。
5.具体例① 再婚した母親の夫と養子縁組した場合
養子縁組と相続の関係で、よくあるのが親の再婚です。

例えば、父親と母親が離婚し、子どもは母親と生活していたとします。
その後、母親が再婚し、子どもが再婚相手の男性と普通養子縁組をしました。
この場合、子どもには次の法律上の親子関係があります。
- 実の父親
- 実の母親
- 養父となった母親の再婚相手
普通養子縁組であれば、実の父親との親子関係は終了しません。
そのため、実の父親が亡くなった場合にも、子どもには相続権があります。
もちろん、実の母親や養父が亡くなった場合にも、それぞれ相続人となる可能性があります。
親が離婚したことや、再婚相手と養子縁組をしたことだけで、実父の相続権がなくなるわけではありません。
6.具体例② 養子と実子がいる場合の相続割合
父親が亡くなり、相続人が次の3人だったとします。
- 妻
- 長男(実子)
- 長女(普通養子)
相続財産は4,000万円で、遺言書はないものとします。
この場合の法定相続分は、
妻:2分の1
長男:4分の1
長女:4分の1 です。
金額にすると、
妻:2,000万円
長男:1,000万円
長女:1,000万円 となります。
養子である長女も、実子である長男と同じ割合で相続します。
養子だから法定相続分が少なくなるということはありません。
なお、これは法定相続分による計算例です。相続人全員で遺産分割協議が成立すれば、異なる割合で財産を分けることもできます。
7.養子縁組した人が亡くなった場合、実親と養親のどちらが相続する?
ここまでは、実親や養親が亡くなった場合の話でした。
では、反対に養子本人が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。
例えば、普通養子縁組をしたAさんが亡くなり、Aさんには配偶者も子どももいなかったとします。
実父母と養父母が全員健在だった場合、普通養子縁組では実親と養親の両方が法律上の親になります。
そのため、実父母と養父母の4人が相続人になることがあります。
この場合、同順位の父母4人の法定相続分は、それぞれ4分の1です。
一方、特別養子縁組では原則として実親との親族関係が終了するため、実父母は相続人にならず、養父母が相続人になります。
8.養子縁組をした人にも遺留分はある?
養子には、相続権だけでなく、遺留分も認められるのでしょうか。
結論として、法律上の子どもである養子にも、実子と同じように遺留分が認められます。
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の財産の取り分です。
例えば、養父が、
「すべての財産を実子である長男に相続させる」
という遺言書を残した場合でも、養子には遺留分が認められる可能性があります。
普通養子縁組の場合には、実親との親子関係も継続するため、実親の相続についても遺留分が問題になることがあります。
一方、特別養子縁組では原則として実親との親族関係が終了するため、実親の相続について遺留分を請求することはできません。
9.養子縁組をすると相続人の人数が増えることがある
普通養子縁組によって、相続人の人数が増える場合があります。
例えば、父親に実子が2人いたところ、別の人と普通養子縁組をしたとします。
その後、父親が亡くなった場合、実子2人に養子1人を加えた3人が子どもとして相続人になります。
養子縁組前は実子2人がそれぞれ2分の1ずつ相続する関係だったとしても、
養子縁組後は、子ども3人がそれぞれ3分の1ずつ相続する関係になることがあります。
そのため、養子縁組は既存の相続人の相続割合にも影響します。
また、養子縁組によって法定相続人が増える場合でも、
相続税の計算では、法定相続人の数に算入できる養子の人数について一定の制限があります。
民法上の相続権と相続税の計算は、区別して考える必要があります。
10.養子縁組をしていたことを知らなかった場合は?
相続手続きで注意したいのが、亡くなった方に養子がいることを家族が知らなかったケースです。
例えば、父親が亡くなり、妻と実子2人で遺産分割協議を進めようとしたところ、
戸籍を調査すると、父親が過去に別の人と普通養子縁組をしていたことが判明したとします。
この場合、その養子も相続人となる可能性があります。
相続人全員が参加していない遺産分割協議は、原則として有効に成立しません。
そのため、「家族が把握している子どもだけで遺産分割をする」という進め方は危険です。
相続手続きを行う際には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等を収集し、養子縁組の有無を含めて相続人を調査することが重要です。
11.養子縁組を解消した場合、相続権はどうなる?
養子縁組を解消することを「離縁」といいます。
普通養子縁組では、一定の要件のもと、協議や裁判によって離縁することができます。
離縁が成立すると、原則として養親との法律上の親族関係は終了します。
そのため、離縁後に養親が亡くなった場合、元養子には原則として養親の相続権はありません。
ただし、養親が亡くなった時点ですでに相続が発生していた場合など、離縁の時期によって判断が異なることがあります。
また、特別養子縁組の離縁は非常に限定されており、通常の普通養子縁組と同じように自由に解消できるわけではありません。
12.養子縁組がある相続で注意したいこと
養子縁組がある場合には、次の点を確認することが重要です。

①普通養子縁組か特別養子縁組か
実親との相続関係が異なります。
②養子縁組が成立した時期
相続開始時点で法律上の親子関係があったかを確認します。
③離縁していないか
離縁が成立している場合、相続人の範囲が変わる可能性があります。
④他に養子がいないか
戸籍を調査し、相続人に漏れがないか確認します。
⑤遺言書がないか
遺言書がある場合には、法定相続分とは異なる財産の承継方法が指定されていることがあります。
13.まとめ|普通養子と特別養子では実親の相続権が異なる
養子縁組をすると、養親との間に法律上の親子関係が生じ、養子は原則として実子と同じように相続権を持ちます。
ただし、実親との相続関係は、養子縁組の種類によって異なります。
普通養子縁組の場合
実親との親子関係が継続するため、実親と養親の両方について相続権があります。
特別養子縁組の場合
原則として実親との法律上の親族関係が終了するため、実親の相続権はなくなり、養親の相続人となります。
また、養子は実子と同じ法定相続分を持ち、遺留分についても同様に扱われます。
養子縁組がある相続では、戸籍を確認せずに相続人を判断すると、相続人の漏れや遺産分割協議のやり直しにつながる可能性があります。
「養子に出されたけれど実親の相続が発生した」
「亡くなった親に養子がいることが分かった」
「再婚相手と養子縁組をした子どもの相続権を知りたい」
という場合には、戸籍を収集して法律上の親子関係を正確に確認することが大切です。
養子縁組が関係する相続手続きでお困りの場合には、行政書士などの専門家への相談も検討してみましょう。
