所有不動産記録証明制度とは?亡くなった親の不動産をまとめて調べられる新制度を解説

所有不動産記録証明制度とは?亡くなった親の不動産をまとめて調べられる新制度を解説
親が亡くなって相続手続きを始める際、
「父がどこに土地を持っていたのか分からない」
「実家以外にも不動産があるかもしれない」
「昔、祖父から山林を相続したと聞いたことがある」
「亡くなった親名義の不動産をまとめて調べる方法はないの?」
という問題が生じることがあります。
相続手続きでは、預貯金や株式だけでなく、
亡くなった方が所有していた土地や建物についても調査しなければなりません。
しかし、これまでは「亡くなった人が全国のどこに不動産を所有しているのか」を
一覧的に調査することが難しいという問題がありました。
そこで、2026年(令和8年)2月2日からスタートしたのが、
「所有不動産記録証明制度」です。
この記事では、所有不動産記録証明制度について、
制度の仕組み、利用できる人、費用、請求方法、注意点まで分かりやすく解説します。
〈目 次〉
1.所有不動産記録証明制度とは?
2.なぜこの制度が作られたの?
3.どんなときに利用すると便利?
4.誰でも請求できるの?
5.どこの法務局で請求するの?
6.請求するとどのように調査される?
7.重要なのは「検索条件」
8.複数の住所で検索することもできる
9.費用はいくら?
10.この制度を使えば全国の不動産が100%見つかる?
11.名寄帳や固定資産税の資料はもう必要ない?
12.所有不動産記録証明書があれば相続登記も完了する?
13.相続登記の義務化との関係
14.利用するときのチェックポイント
15. まとめ|所有不動産記録証明制度を活用して相続不動産の見落としを防ぐ
1.所有不動産記録証明制度とは?
所有不動産記録証明制度とは、登記官が、特定の人について所有権の登記名義人として記録されている不動産を検索し、
一覧的にリスト化して証明する制度です。
例えば父親が亡くなったものの、
「自宅以外にどこに土地を持っていたのか分からない」
という場合を考えてみましょう。
従来であれば、
固定資産税の納税通知書を確認する
↓
不動産がありそうな市区町村で名寄帳等を確認する
↓
所在地が判明した不動産について登記情報を確認する
といった方法で調査することが一般的でした。

しかし、この方法には大きな問題があります。
例えば、
大阪市 自宅
奈良県 山林
和歌山県 農地
というように複数の地域に不動産を所有している場合、
相続人が奈良県や和歌山県の不動産の存在を知らなければ、調査から漏れてしまう可能性があります。
そこで設けられたのが 所有不動産記録証明制度 です。
2.なぜこの制度が作られたの?
所有不動産記録証明制度が作られた背景には、
相続登記がされないまま放置される不動産の問題があります。
例えば父親が亡くなったとき、
相続人が自宅の存在は把握していても、
地方にある山林の存在を知らなかったとします。
すると、
自宅 → 相続登記をした
山林 → 存在を知らないため相続登記をしていない
ということが起こります。
さらに、その相続人が亡くなると
次の世代へ相続が発生し、時間の経過とともに相続関係が複雑になってしまうことがあります。
これまでは不動産の登記記録が土地・建物ごとに作成されているため、
特定の人がどこに不動産を所有しているのかを一覧的に把握することが容易ではありませんでした。
そこで、相続人が相続対象となる不動産を把握しやすくし、
相続登記の漏れを防止するために所有不動産記録証明制度が設けられました。
3.どんなときに利用すると便利?
特に利用を検討したいのは、次のようなケースです。

「亡くなった親の不動産がどこにあるのか分からない」
最も典型的なケースです。
自宅については把握していても、それ以外の土地について分からない場合があります。
「親が祖父母から不動産を相続していた」
例えば、父が昔、祖父から山を相続したと聞いたことがあるものの、詳しい場所が分からないケースです。
「親が転勤や引っ越しを繰り返していた」
過去に住んでいた地域で不動産を購入している可能性があります。
こうした場合に、所有不動産記録証明制度を組み合わせて調査することが考えられます。
4.誰でも請求できるの?
所有不動産記録証明書は、
誰でも自由に他人の財産を調べられる制度ではありません。
請求できるのは、主に、
①所有権の登記名義人として記録されている本人
または、
②その人の相続人その他の一般承継人
です。
例えば父親が亡くなった場合、
父親の相続人が、父親について所有不動産記録証明書を請求することができます。
相続人が請求する場合には、
請求人と亡くなった方との関係を確認する必要があるため、
戸籍関係書類などの提出が必要になる場合があります。
5.どこの法務局で請求するの?
この制度の便利なポイントの一つが、全国どこの法務局でも請求できることです。

例えば、
「亡くなった父親は大阪に住んでいたが、奈良県や和歌山県にも土地を持っていたかもしれない」
という場合でも、それぞれの地域の法務局へ行って請求するという仕組みではありません。
所有不動産記録証明書は全国の法務局で、書面またはオンラインにより請求できます。
書面請求については郵送による請求も可能です。
したがって、遠方に不動産がある可能性がある場合でも利用しやすい制度になっています。
6.請求するとどのように調査される?
基本的な流れは、
①法務局へ請求
↓
②登記官が検索
↓
③証明書の交付
となります。
まず、請求書に必要事項や検索条件などを記載して法務局へ提出します。
その検索条件をもとに、登記官が登記情報システムを検索します。
そして、検索条件に該当する不動産があれば、
その結果が所有不動産記録証明書として交付されます。
なお、該当する不動産がなかった場合でも、
登記上該当する不動産がない旨の証明書が発行されます。
7.重要なのは「検索条件」
この制度を利用するうえで非常に重要なのが検索条件です。
所有不動産記録証明書は、請求書に記載した氏名・住所などの検索条件をもとに作成されます。
例えば亡くなった父親が、
現在の住所
大阪市〇〇区……
である一方、昔購入した土地について、
以前の住所
奈良市〇〇町……
のまま登記されていたとします。
現在の住所だけを検索条件にすると、
旧住所で登記された不動産が検索結果に出てこない可能性があります。
そのため、亡くなった方の過去の住所が分かる場合には、
それらを確認したうえで検索条件を検討することが重要です。
8.複数の住所で検索することもできる
「父親が何度も引っ越している」という場合でも、複数の検索条件を指定することができます。
例えば、
検索条件①
現在の氏名+死亡時の住所
検索条件②
現在の氏名+以前の住所
検索条件③
現在の氏名+さらに古い住所
という形です。
ただし、1つの検索条件欄に複数の氏名や住所をまとめて記載するのではなく、
それぞれ別の検索条件として指定する必要があります。
不動産の見落としを減らすためには、
どの住所を検索条件として指定するかが重要なポイントになります。
9.費用はいくら?
所有不動産記録証明書の交付には手数料がかかります。
2026年9月現在、法務省が案内している手数料は、
1つの検索条件・1通当たり、
書面請求 1,600円
オンライン請求+郵送交付 1,500円
オンライン請求+窓口交付 1,470円 です。
注意したいのは、検索条件ごとに手数料がかかることです。
例えば、
住所A
住所B
住所C
住所D
の3つを検索条件として指定し、証明書を1通請求する場合、書面請求であれば、
1,600円×3検索条件=4,800円 となります。
そのため、過去の住所が多数ある場合には、
検索条件と費用の両方を考えながら請求することになります。
10.この制度を使えば全国の不動産が100%見つかる?
ここは特に重要なポイントです。
所有不動産記録証明制度を利用したからといって、
亡くなった方の不動産を必ず100%発見できるとは限りません。

この制度は、登記情報を一定の検索条件で検索する仕組みだからです。
例えば、
「登記簿上の住所が昔の住所のまま」
という不動産がある場合、現在の住所だけを検索条件として請求すると、
その不動産が抽出されない可能性があります。
また、検索対象となるのは所有権の登記がされている不動産です。
土地や建物について表示に関する登記しかされていないものは検索対象になりません。
さらに、システムに登録されていない、コンピュータ化されていない不動産についても検索できません。
つまり、
「証明書に載っていない=絶対に他の不動産はない」と単純に判断することはできません。
11.名寄帳や固定資産税の資料はもう必要ない?
所有不動産記録証明制度ができたからといって、従来の調査方法が不要になったわけではありません。
むしろ、複数の調査方法を組み合わせることが重要です。
①固定資産税納税通知書・課税明細書を確認する
まず手元にある資料から不動産を確認します。
②名寄帳等を確認する
不動産を所有していた可能性のある市区町村について確認します。
③所有不動産記録証明制度を利用する
登記上の所有不動産を一覧的に調査します。
④登記事項証明書を取得する
発見した不動産について、所有者、共有持分、抵当権などの具体的な登記内容を確認します。
このように複数の資料を照らし合わせることで、相続不動産の見落としを防ぎやすくなります。
12.所有不動産記録証明書があれば相続登記も完了する?
これも誤解しやすいポイントです。
所有不動産記録証明書を取得しただけでは、相続登記は完了しません。
所有不動産記録証明制度は、
あくまでも「どの不動産が登記上記録されているのか」を調査し、証明するための制度です。
例えば父親名義の土地が3筆見つかった場合には、その後、
相続人を確定する
↓
遺言書を確認する
↓
必要に応じて遺産分割協議を行う
↓
誰が不動産を取得するのか決める
↓
必要書類を準備する
↓
相続登記を申請する
という手続きが必要になります。
つまり、
所有不動産記録証明制度=不動産を探すための制度
相続登記=不動産の名義を相続人へ変更する手続き と考えると分かりやすいでしょう。
13.相続登記の義務化との関係
所有不動産記録証明制度と一緒に知っておきたいのが、相続登記の義務化です。
2024年4月1日から相続登記が義務化されています。
相続によって不動産を取得した相続人は、一定の期間内に相続登記を行う必要があります。
しかし、
「そもそも親がその不動産を所有していたことを知らなかった」のであれば、適切に相続登記をすることもできません。
そこで所有不動産記録証明制度を利用して相続対象となる不動産を把握しやすくすることで、相続登記の漏れを防ぐことにつながります。
14.利用するときのチェックポイント
所有不動産記録証明制度を利用するときには、特に次の点を確認しましょう。
・亡くなった方の正確な氏名を確認する
・死亡時の住所を確認する
・過去の住所についても調べる
・住所ごとに検索条件を検討する
・検索条件ごとに手数料が発生することを確認する
・証明書だけですべての不動産を把握できるとは限らないことを理解する
・固定資産税関係書類や名寄帳等も確認する
・発見した不動産について登記内容を確認する
・相続登記が必要か確認する
特に重要なのは、
「どの住所で登記されている可能性があるか」という点です。
亡くなった方が何度も転居している場合には、戸籍の附票などから過去の住所を整理したうえで請求を検討するとよいでしょう。
15.まとめ|所有不動産記録証明制度を活用して相続不動産の見落としを防ぐ
所有不動産記録証明制度は、2026年2月2日にスタートした新しい制度です。
亡くなった親などが登記簿上の所有者として記録されている不動産について、
一定の検索条件をもとに一覧的に調査できるようになったことで、
相続財産調査の利便性は大きく向上したと思います。
特に、
「親がどこに土地を持っているのか分からない」
「実家以外にも不動産がありそう」
「昔住んでいた地域に不動産があるかもしれない」
「祖父母から相続した土地があると聞いている」
といった場合には、利用を検討する価値があります。
一方で、この制度だけで亡くなった方の不動産を完全に把握できるとは限りません。
登記上の氏名・住所と検索条件が一致しない場合や、検索対象にならない不動産などもあるからです。
そのため、
固定資産税関係書類、名寄帳、所有不動産記録証明制度、登記事項証明書などを組み合わせて調査することが、
不動産の見落としを防ぐポイントです。
また、所有不動産記録証明書は「不動産を探すための証明書」であり、
それだけで相続登記が完了するものではありません。
不動産が判明した後は、相続関係を整理し、
遺言書や遺産分割の内容などに応じて相続登記を行う必要があります。
相続財産に不動産が含まれている場合には、
まず「どの不動産を相続するのか」を正確に把握することが重要です。
所有不動産記録証明制度を上手に活用しながら、
相続不動産の調査とその後の手続きを進めていきましょう。
